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ヤマト運輸問題でアマゾン配送料は値上げに向かう

■アナログ仕事から脱せない宅配業務

 昔に読んだ評論家の竹村健一氏の『金融を知らんと明日は大損!』という本の中に、これから高成長する業種は「金融」と「通信」と「運送」だと書かれていたが、それから20年近く、情報革命化と歩調を合わせるかのように、この3業種は拡大の一途を辿ってきた。
 この3業種の中で現在、最も注目されるようになってきたのが「運送」であり、ネット通販の隆盛により、様々な問題点が表面化しつつある。
 データを扱うことが主流になった「金融」や「通信」と違って、「運送」の場合、荷物をデジタルデータにはできないので、どこまで時代が進んでも人間が荷物を運ばなければいけない。書籍や映像、音楽、ゲームなどデジタル化が可能のものはこの限りではないが、電器製品や衣類、日用品等はどこまでいってもデジタル化は不可能なので、人間が配達するしかない。

 最近は、仕事が多くなり過ぎたヤマト運輸の報道もよく耳にする。
 ヤマト運輸の場合、アマゾンからの請け負い仕事が多くなり過ぎたことによる長時間&超過密業務が問題となっており、仕事量を減少させる方向に調整されるとの噂も飛び交っている。政府が「働き方改革」を標榜しているので、宅配業務の過労問題がクローズアップされる前に先に手を打ったのかもしれないが、いずれは見直されるべき課題だったのだろうと思う。

■未だ現実味のないドローン配達

 アマゾンの宅配業務は佐川急便が8年間務めた後、ヤマト運輸に変更となって4年を迎える。ヤマト運輸の配送人員を増やせばいいという意見も聞かれるが、実際に人員は増やしているらしい。しかし、あまりにも人員を増やし過ぎると人件費も跳ね上がることになり、運送料も上げなければ採算が合わなくなる。
 運送業者はヤマト運輸だけではないので、アマゾンが配送料値上げを素直に受け入れるかどうかも分からない。

 ドローンを使用できるようになれば解決するというような意見もあるようだが、これも今のところはまだ試験段階であり、各家庭の玄関先まで商品を配送するなどという芸当がそう易々と実現できるとは思えない。仮にできたとしても、受け取り人が不在ならどうするのかという問題もある。荷物によっては防犯の問題や危険性の問題もあり、それなら、コンビニで受け取る現在のシステムの方が優れているという人もいるだろう。

 空を見上げれば、宅配用のドローンがいつも飛んでいるというような光景は想像できても、リアルさが全く感じられず、未だSFの領域に近いと思える。
 自動運転車にしても宅配ドローンにしても、テクロノジーだけが先行して進んでいるだけで、未だインフラが全く追い付いていない状態であり、どんな事故が起こるかさえ分からない。もし事故が発生した場合には、どういった問題に発展するかというシミュレーションすらできていない状況だろうと思う。
 オスプレイ墜落問題のように、ドローン墜落問題もそのうち問題視されるようになるかもしれない。オスプレイであれだけ騒がれるのだから、ドローンが無音で家屋に墜落したなどという事故が発生した場合、「ドローン反対!」と言うような人が大勢出てくるかもしれない。

■「ヤマト運輸」の配送問題は「すき家」のワンオペ問題と同じ

 ヤマト運輸の配送員の給料を上げればいいという意見もあるが、給料を上げれば解決する問題ではないだろう。かつての「すき家」のワンオペ問題と同様、昼食を食べる時間もないほどに多忙なことが問題なのだから、給料を上げたからといって、人員が確保できるとは限らない。実際に「すき家」でも、時給を上げたところで逃げ出すアルバイトを引き止める効果は無かった。
 ここはやはり、「すき家」を見倣って、仕事量(仕事時間)を減少させる方向で手を打つのが得策だろうと思う。その場合、アマゾン側がヤマト運輸以外の運送業者とも手を組まなければいけなくなる。もしそれが不可能ということなら、ヤマト運輸も佐川急便と同様、撤退するしかなくなる。
 しかし、佐川急便やヤマト運輸の代わりを担う宅配業者が有るとは思えないし、仮に有ったとしても佐川やヤマトの二の舞(三の舞)になってしまう可能性が極めて高い。

 いずれにしても、現状のシステムではアマゾンの宅配業務を継続していくことは難しくなってきていることは間違いない。どう転んだとしても、おそらくアマゾンの配送料は上がる方向で調整が進むのではないかと推測する。ネット通販の無料配送や激安配送は、大きく見直される方向に進みそうだ。
 ネット通販の3大メリットである「早い安い動かなくてもいい」の「早い・安い」のどちらか1つは削られていくことになると思われるが、それは社会全体で考えれば良いことなのかもしれない。三兎を追って二兎が手に入るのであれば、それで満足するべきなのかもしれない。
【関連記事】アマゾン1円販売モデルの行方
      「すき家」の誤算【見えない付加価値】

【追記】2017.2.27
(BLOGOS転載記事のコメントに対する返答になります)

>ただ、この「自由人」氏という筆者は、わりと最近、「1日8時間労働にこだわる必要はない。今はもっと短くて良い時代だ。8時間もする仕事がない」みたいなことを何度か力説していたので、その主張と、今回の宅配現場の過酷な労働状況の議論とはどういうふうに両立しているのかどうか、一度たずねてみたいものです。

 職種によっては8時間もいらない仕事もあれば、8時間では全く足りない仕事もあるのは当たり前の話であって、なぜ全ての会社や仕事を十把一絡げにしなければいけないのか意味不明です。「8時間」という時間に囚われる問題と、仕事量の多寡の問題は全くの別問題であって、分けて考えるべきであることは普通に考えれば解ることです。

>1日8時間にこだわる必要がないどころか、1日24時間あっても足りないような現場があって問題になっているわけですが。

 これも、ただの言い掛かりにしかなっていません。分けて考えるべき問題を「同一に考えろ!」と言っているようなものですから、誰が考えても無理ゲーです。

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投稿: 管理人 | 2017年2月27日 (月) 21時11分

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