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理想的な「同一労働同一賃金」とは?

■目標が曖昧模糊な「同一労働同一賃金」

 6月29日に政府肝いりの「働き方改革法」が成立した。
 この法案の中身については、賛成できるものもあれば、反対したくなるものもあり、一概に評価し難いものがあるが、結果的には「改善」だけではなく「改悪」となる部分もありそうだ。

 政府は、これまでにも『ハッピーマンデー』や『プレミアムフライデー』など、世間一般の民間企業の労働環境を無視したかのような浮世離れした制度を実施してきた経緯があるので、『働き方改革』についても今後の成り行きを注意深く観察する必要がある。

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 「働き方改革」において最も注目すべきは、やはり「同一労働同一賃金」の実現だろうか。その実現の成否はともかくとして、政府は「正社員と非正規労働者の不合理な待遇差を無くす」ことを目的としている。しかし、具体的にどうするのかは未だ判らず、曖昧な目標を掲げている状態だ。

■見落としがちな「会社への貢献度」

 以前のブログ記事で、「正社員と非正規労働者の給料の額面を同じにしても同一労働同一賃金にならない」と書いたことがある。正社員限定の各種の福利厚生を無視して、給料だけを同額にしてもトータル的には同一労働同一賃金にはならないと書いた。

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 しかしながら、「会社への貢献度」における給料の違いというものも考える必要があると思う。こう書くと「年功序列制度」と混同してしまうかもしれないが、「年功序列制度」というのは、会社に勤めているだけで誰でも自動的に給料が上がっていくというシステムなので異なる。
 「会社への貢献度」というのは、貢献した度合いによって、評価が違ってくる制度のことを意味する。無論、正社員であっても非正規労働者であっても変わらない。

 例えば、長年、勤続して、時には会社の経営危機を救ったような人物と、今年入社したばかりの人物が、表面上、全く同じ仕事をしているからといって、給料が全く同じでは「会社への貢献度」というものが全く考慮されていないことになってしまう。
 ただ会社に勤めているだけで年々、給料が自動的に上がっていくという「年功序列制度」は歪な制度だが、「会社への貢献度」を無視した同一労働同一賃金もまた歪な制度だと言える。

 同じ仕事をしている労働者を次のような4つのグループに分けてみよう。

 A、仕事がよくできて、会社への貢献度も高い人
 B、仕事はできるが、会社への貢献度は低い人
 C、仕事はあまりできないが、会社への貢献度は高い人
 D、仕事はできず、会社への貢献度も低い人

 こういったA〜Dの労働者がいるとすれば、それぞれ給料が違って然るべきだと思う。しかし、Aに属する人同士は同じ給料、Dに属する人同士は同じ給料とするのが、本当の意味での「同一労働同一賃金」だと言える。「同一労働同一賃金」というものは、マクロ的(グループ的)には同じでも、ミクロ的(個別的)には違うのである。

■「同一労働同一賃金」の要諦は「公平」

 会社への貢献度の高低は評価が非常に難しいかもしれないが、「同一労働同一賃金」は「平等」ではなく「公平」に根ざした制度でなければ意味がない。年功序列は「平等」を意味するが、会社への貢献度は「公平」を意味している。
 「同一労働同一賃金」とは、どんな労働者でも賃金は一律平等にしなければならないという意味ではなくて、個別の労働力と貢献度の度合いによって賃金を公平にする(=不平等にする)ことを意味する。

 労働の質と量、会社への貢献度の度合いによって給料の差異を設けるが、同じ労働と貢献をしている人間には差異を設けないという公平な制度こそが理想的な「同一労働同一賃金」だと言える。

 「同一労働同一賃金」も、共産主義的な悪平等な制度に堕すれば、労働者は皆、やる気を失い、失敗するということを肝に命じなければならない。
 「働き方改革」の要諦は、「悪平等」な制度を「公平」な制度に変えていくことにある。目指すべき「公平」が、いつの間にか「平等」に掏り替わらないように注視しなければならない。

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