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『評伝 小室直樹』を読んで。

■哲人小室直樹の一生

 8年前(2010年)に逝去された小室直樹氏の評伝『評伝 小室直樹』(村上篤直著)が出版されたので、早速、購入して読んでみた。上・下巻で計1500ページもあるという、評伝としては異例の大作だった。
 巻末資料だけで計200ページ以上あるので、実質的には1200ページの評伝ということになっている。しかし、これだけ分厚い本なのに、上・下巻ともに栞紐(しおりひも)が付いていなかった。

 

 私が小室直樹氏の本を読んでファンになったのは21世紀になってからの話なので、小室氏が20世紀にどういう活動(活躍)をされていたのかはあまり詳しくは知らなかった。テレビの生放送中の放送事故(所謂「小沢遼子足蹴り事件」)でメディアから干されたという話を聞いていた程度なので、少し変わった天才肌の学者という位の認識しか持っていなかった。

 しかし、本書を読んでみたことで、小室直樹という人間の破天荒極まりない学者人生の一端を垣間見ることができた。「○○と天才は紙一重」と言うけれど、ここまでその言葉がピッタリと当て嵌まる人物も珍しいと思う。本文中「破滅型の天才」という言葉があったが、その言動は、まさしく、マッドサイエンティストの如くで、良く言えば「天真爛漫」、悪く言えば「KY」という感じだろうか。しかし、その裏表の無い素直な性格さゆえに周りにいた多くの人々に愛された人物でもあった。

■「ルンペン学者」と呼ばれた男の素顔

 小室氏は、そのあまりにも高い能力ゆえにか、アカデミズムの世界では認められなかったが、ルンペン学者と言われながらも、飾ることなく、誰よりも純粋に学問を学び、学問を究めた人物だった。
 本書を読んで初めて知った破天荒な武勇伝の数々は、まるでマンガの主人公のようですらある。案外、本書を『小室直樹物語』として漫画化すれば面白いかもしれない。

 小学生の時点で「総理大臣に成る」という大望を抱いていたというのも驚きだが、中学校からの朋友であり保護者役だった渡部恒三氏は政治家となり、小室氏自身も総理大臣だった田中角栄氏と対談されている。

 小室氏のような人が、もし間違って総理大臣にでもなっていれば面白かっただろうな…と思う反面、ヘタをすると暗殺されていた可能性もあると思う。小室氏自身の著書にも「政治家として凶弾に倒れるのは男の本懐」というようなことが書かれてあったと記憶している。
 本音と建前を使い分ける人でないと日本の政治家は務まらないという悲しい現実があるので、たとえ正論者であっても本音だけで政治を行うような人は独裁者と判断されて潰される可能性がある。

 小室氏はかつて弁護士になるという道もあったのだそうだが、弁護士では多くの人を救うことはできないということで学者の道を選ばれたらしい。
 辞書を丸ごと暗記できるような人間離れした記憶力を持っていたそうなので、司法試験は十分にパスできたと思われるが、嘘がつけない真っ直ぐな性格なので実務は無理だったかもしれない。やはり小室氏には弁護士よりも学者の方が似合っていたと思える。
 小室氏の場合、記憶力だけでなく、自分自身で思考してオリジナルの理論を組み立てる能力の方が遥かに勝っていたと思われるので、きっと、学者に成るべくして生まれた人だったのだろう。

 こんな破天荒な学者(評論家)が現代にもいてくれれば面白いのだが、なかなかここまで希有なキャラは見当たらない。まさにその時代、唯一無二の存在だった学者、小室直樹。未だその才能は認められたとは言えないが、入念かつ膨大な取材によって彼の素顔を活写した本書は、きっと多くの人を魅了することだろう。
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