「人質司法」を問題視しない「人権派」の謎
■「人質司法」は「推定有罪司法」
逮捕拘留から108日間が経過して、ようやくゴーン氏が保釈された。
確実な証拠も出揃わないまま、本人が罪を否定しているにも拘らず、3ヶ月間も冷暖房の無い異国の狭い密室に閉じ込められた心境は如何ばかりだろうか? 他人事ながら、肉体的にも精神的にもゾッとするような悪夢体験だったのではないかと同情してしまう。
海外では「不思議の国のゴーン」と揶揄されたそうだが、ゴーン氏の心境からすれば「不思議の国」と言うよりも、さしずめ、「悪夢の中のゴーン」だったに違いない。
ゴーン氏逮捕後、巷では「人質司法」という言葉を何度も耳にした。この間、日本の恥部とも言える前近代的な「人質司法」の問題点を俎上に載せて糾弾している言論人も少なからずいたようで、これほどまでに日本の「人質司法」の実態が世界に向けて発信され、その歪んだ姿がリアルに浮かび上がったことはかつてなく、ゴーンショックにおける「怪我の功名」だったと言えるのかもしれない。
「人質司法」というのは、換言すれば、「推定有罪司法」と言うことができると思う。
例えば、あなたが痴漢と間違われて(または嵌められて)逮捕されたとして、その罪を認めるまで延々と拘留されるようなものである。
その場合、「証拠隠滅の可能性が有るから保釈できない」などと言われても、やってもいない証拠など隠滅も何もないわけで、絶望感に打ちひしがれ、根負けして「痴漢しました」と嘘を言うまで独房の中に監禁されることになる。
それでようやく保釈されたとしても、事情を知らない世間の人々からは「やっぱり、あいつは痴漢だった」「あいつは嘘つきだ」と皮肉にもならない批判をされることになる。これでは、まるで悪夢そのものだ。
■法律や人権よりも感情を優先する「人権派」
「人質司法」というものは、人権無視の独裁国家の司法であり、海外の人々から見れば、日本も中国や北朝鮮と変わらないと思われているかもしれない。
しかし、常日頃から「人権」を最重要視する人権派の人々は、なぜ、「人質司法」については黙りを決め込んでいるのだろうか? これほど、世間の同情心を得ることができる格好の題材が目の前に転がっているというのに、なぜ、見て見ぬ振りをするのだろうか?
おそらく、その答えは、
「相手が大金持ちのカルロス・ゴーンだから」
それが1つの大きな理由だろうと思われる。
人権派の人々というのは、人権を「錦の御旗」にしてはいるものの、同時に“金持ちを憎むこと”を教義とするマルクス教の信者である場合が多いので、他人の「人権」よりも自分の「思想」が優先されてしまうのかもしれない。
大金持ちのゴーン氏が逮捕されたら罪状の有無に関係なく狂喜乱舞して溜飲を下げ、不当に拘留され続けて保釈時の窶れた姿を衆目に晒しても、内心では「ざまあみろ」と思っているのかもしれない。
法律や人権よりも感情(嫉妬)が優先、これで「人権派」と名乗っているのだとすれば、その欺瞞性には開いた口が塞がらない。
最後に、本記事は「推定無罪」の原則に則って書いています。
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