2つの『空飛ぶタイヤ』の比較
■「映画版」に足りないもの
WOWOWドラマの中でも屈指の…と言うよりも、個人的には最高の傑作と思う『空飛ぶタイヤ』の映画版のDVDが発売されたので比較するために観てみた。
観終わった感想の方は、当初から予想していた通り「ドラマ版には敵わない」だった。もちろん、同じ原作を映像化しているのでストーリー的に面白いドラマであることに違いはないのだが、おそらく、WOWOWドラマ版よりも映画版の方が面白かったという人はほとんどいないと思う。
その理由はどこにあるのかというと、結局のところ、映画版では「尺が足りない」ということに尽きると思う。
いくらキャストを豪華にしても、映像にお金をかけても、1冊の長編小説を120分程度の映画枠で製作するのは難しい。2時間では小説本来の魅力を余すことなく伝えるという芸当はできないので、どうしても要所要所のダイジェスト版のような感じになってしまう。そのため、主人公の心情や内面の掘り下げが浅くなり、それに比例して視聴者の感情移入度も浅くなってしまう。
■長編小説を映像化する最適な手段
たまに、映画を2本立に分割して映画化される長編小説もあるが、そんな真似は余程の大作しかできないだろうし、1つの物語を時期をズラして半分ずつ観るというのも感情移入度が低下してしまう。料金的にも2本で3600円もかかってしまうので、経済的にも足枷になって観客数も減少してしまうことになる。ハリウッドの『アベンジャーズ』シリーズでもない限り、2本立にして興行的に成功するのは至難の業だろう。
DVD化されれば2本を同日に観ることができるが、映画ではそうはいかない。
となると、長編小説の映像化は、テレビ放送として4〜5時間かけて描くのが最も最適な形式だと言える。それで成功したモデルが、まさにWOWOWのドラマWなのだろうと思う。
先月にも『下町ロケット』に関するブログ記事を書かせてもらったが、民放ドラマではタブーが多過ぎて、少し骨太な小説となると、そのままストレートに映像化できないという縛りがある。『空飛ぶタイヤ』のような実在する自動車メーカーをモデルにしたようなスポンサー無視の骨太ドラマは、映画化するか、有料ドラマ化するしか映像化する手段が無い。
その2つの手段を用いて製作された本ドラマを実際にそれぞれ観比べてみると、最終的に行き着く結論は、後者(有料ドラマ化)が最も適しているということがよく分かった。
百聞は一見に如かず、まだどちらも観ていない人は、両方を観るとその違いがよく分かると思う。興味がある人は是非、観比べてみることをオススメしたい。
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